※番外編ブログ※ story 9『扉の向こう』

※このブログは、「キセキの杜 ジョブステーション」で働く、生活支援員Nの物語です。

story 9 『扉の向こう』

ノックした扉の向こうから声がした。

(どうぞ、お入り下さい……)

ようやく動き出した、私のこれからの居場所づくり。
願い続けた、就労移行支援事業所。
ほとんど同時に、2社から書類選考通過のお知らせを戴いた私は、
双方の企業の情報を出来る限り収集し、頭の中に取り入れた。

無資格未経験の私が、採用まで漕ぎ着けるかどうかは分からなかったけれど、
正直なところ、先に採用を戴いた方に決めようと思っていた。
どちらも、環境や待遇に関しては申し分がない。

グローバルな視野を打ち出し、多角的に事業を広げるA社。
堅実にコツコツと積み上げ、ひたむきさと誠実さを保つB社。

同じ就労移行支援をしている会社なのに、面白いようにイメージが違う。

枠に囚われないという私の価値観に合ったのは、A社だった。
過去に、会社の理念や規約を刷り込まれ、雁字搦めにされた経験があったせいか、
「不自由」に対して、かなり抵抗があったように思う。

ところが、先に素早くレスポンスがあったのはB社、
そして先に一次面接を受けたのもB社だった。

B社の一次面接の面接官は、電話対応時から非常に物腰が低く、
穏やかな印象で、距離感を感じさせない口調だった。

周りをホッとさせる空気。
上からでも下からでもなく、スッと対等に向き合えるようなお人柄なんだろう。
そう思っていたら、本当に想像通りの方で、思わず(心の中で)微笑んでしまう。

と同時に、まだ20代のようにお若く見えたので、私のイヤらしい経験値は、
「この方も、今、面接官としてのスキルを上げているところなんだな」と深読みしてしまう。

「利用者の方と向き合いたい時に、急ぎの別件が入ったらどうしますか?」

現場でどう動くかを問う、具体的なこの質問が印象に残った。
レスポンスの早さと同様、きっとこの質問の背後にも、施設長の意図が隠れているんだろう。

ひっそりと、心の中で思う。(ボスに会わなければ!)

そして、A社。
                                                       
A社に関しては、少し興味深く感じていた。

「枠に囚われない」という企業理念は素晴らしい。
問題はその内側で、実際の社員がどんな「色」をしているか。
その企業理念が自由であればあるほど、それがただの建前かどうかは、実際の社員で決まる。
「自由」が重要なキーワードだった私には、
社員の方の個々の色を目の当たりに出来るという点で、興味深かった。

ひとつ気になったのが、面接前のメールでのやり取り。
丁寧さの中に、線上からはみ出さないようなマニュアル性を感じていたので、
会ってみないと分からないな、と思っていたのだ。

当日は、二人の面接官が対応して下さった。会社のパンフレットに沿っての事業説明が主となり、
うちはこんな会社なんですよ、変わってるんです、と、二人で顔を見合わせて笑っている。

一人は施設長だったが、真っ当で透明感がある。
「色」を観ようと思っていた私は、逆にまっさらな水を、一杯戴いた感じがした。

喉の渇きを潤せた。それは事実。何も問題はない、はず……。

手応えは良く、先方も、「貴女が来たら色々やってもらえますね!」と嬉しそうに話す。
現場のボスである彼は、嫌みや狡さのない実直な方で、本社に忠実である印象を受けた。

この二つの会社の流れの中に、すでにたくさんの判断材料がある。

丁寧に物事を進め、順を追って段取りを組むA社。面接内容は、会社説明が主。
レスポンスが早く、真っ先に「電話」が来たB社。面接内容は、人間性を確認することが主。

動きだけで見ると、会社の企業理念とは、イメージが逆だ。
やっぱり、肌で感じることが重要だと、つくづく思う。


就職活動は生ものだ。

どれだけシステムが発達し効率の良いマッチングが出来たとしても、最終的には人対人。書面上だけでは伝わらない。
ましてや福祉関係の職種ならば、「人として」が重要視されて当然だと思っている。

応募書類を送った際、書類選考落ちの連絡さえくれなかった事業所が数件あった。
人の就労をサポートする事業所が、応募書類をスルーする、そんな事業所ならこちらから願い下げだ。

少なくとも、無資格未経験の私に会う時間を取ってくれたこの2社は、
利用者に対しても真摯なサポートをしているに違いない。

A社でもし採用を戴ければ、断る理由はどこにもなかった。
企業理念を彷彿とさせるほど、社員の個々の色を重んじている様子はなかったものの、
施設長は「良い人」だと感じたし、変に色が濃いより、透明の方がぶつからないからだ。

ただ、B社のボスを観るまでは、まだ答えを出さない方が良い、そう感じていた。(つづく)

 

次回、story10『深淵』の更新予定は2022/5/30です!

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