※番外編ブログ※ story 10『深淵』

※このブログは、「キセキの杜 ジョブステーション」で働く、生活支援員Nの物語です。

story 10 『深淵』

「純粋であることは良いことだ」

そう主張して、誰かに反感を買うことはほとんどないだろう。
心が純粋であることは、誰もが「良いこと」だと思っていて、もちろん私だって、そう思う。

ただ、年を重ねるごとに、この言葉がすんなり腑に落ちないようになってきた。

純粋という言葉の背景にある、未熟だとか幼稚だとか無知だとか、
そういったマイナス要素を嗅ぎ取ってしまうからだ。

本当の純粋とは、強くなくちゃいけない。
純粋でいられる強さ。そんな透明感が良いと思う。

空を映す水溜りは透明で美しく、ずっと水遊びをしていられるような錯覚に陥る。
幼い頃の無邪気は、それでいい。

ただ、成長とともに自分の弱さと向き合えなければ、人は浅い水溜りのままだ。
誰かが都合良く染めようと絵具を垂れ流せば、沈殿する余裕もなく、すぐに淀んでしまう。

強い純粋とは、清濁合わせ呑んだ「深さ」なんだと思う。

心の中にある影の部分は、「光と影」と同じく、バランスを取り合う為に必ず存在する。
影を認めた上で、光で包み込むこと。

負と向き合い、受け容れていけば、水深は少しずつ深くなる。
どんな絵具を投入されてもクリアにできるのは、深淵を持つ、大きな湖だ。

水溜りは掻き乱されやすいが、湖はいたって穏やかで、大きな船も浮かせられる。
本当の純粋、それは懐の深い、大きな美しい湖のことだろう。

 

前職を退職してから3ヶ月。
私の就職活動もいよいよ大詰めになってきた。

B社のボスとの二次面接は、2時間という長丁場になった。

何を話したのか、具体的なことを書き出すと、それこそレポート用紙何枚にもわたってしまう。
それくらいに事細かであったにも関わらず、契約上の事や会社説明というより、
心のもやもやをひとつずつ吸い取る作業が主だった。

私が仕事をするにあたっての「不安」というもやもやを、ボスは丁寧に掃除機で吸い取る。
人を受け容れるという際においてもっとも重要な作業、ヒヤリングと掃除機がけだ。
その人にとっての不安材料は何か。その人が最も大切にする価値観は何か。

私が懸念していた「企業理念」の合う合わない、現場の色、人を支えるという意味、
それらに対する不安をひとつずつ払拭し、かつ最大の価値観である「自由」について……

「個性のあるスタッフが多くてね、同じように、Nさんの色を出してもらえれば良いと思う」

ボスはそう言った。
自分の心を掃除機がけされる感覚を、面接で感じたのは初めてだった。

面接時に人生観を語れる会社がどれくらいあるだろう。

仕事とは? 遊びとは? 自他とは? 命とは?
すべてじゃないけれど、その概念についても、少なからず話せた記憶がある。
そして、「答えなどありはしない」という答えを識る人は、深い。

その後、有り難く採用を戴いた私は、迷う必要もなくA社の二次面接を辞退し、B社で働くことを決めた。

深淵を持つ、大きな湖。

「このボスの元でなら、何かワクワクすることが出来るかも知れない」

にこやかな笑顔と流暢な言葉の裏に、
積み重ねて来た「深淵」が垣間見えたこと、それが何よりの決定打だ。
理屈ではない直感が、私の頭にゴーサインを出した。

「Nさん、この仕事において何が一番大切か分かる?」

「本気、だよ」

転職活動を始めてからずっと求めていた「本気と自由」が、目の前にあった。(第一部完)

 

※お知らせ※

これまで番外編ブログにお付き合い戴いた皆様、ありがとうございました。
今回を持ちまして、この連載ブログは、一旦終了とさせて戴きます。
今後、また新しい形でお目にかかれることを楽しみにしております。
支援員N

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